歯牙移植とは？

虫歯や歯周病になったとき「自分の歯は極力残したい」そう思われるでしょう。歯科医師や歯科衛生士も同じように、患者様の歯を極力残せるように治療をしています。しかし、虫歯の進行具合や、歯周病の悪化具合によっては、抜歯せざるを得ないことがあります。

歯を抜歯すると噛み合わせが悪くなったり、食事や会話で支障をきたしたりするため、入れ歯やブリッジ、インプラントなどで人工歯をいれて補うのが一般的です。

これらの方法のほかに、「自家歯牙移植（じかしがいしょく）」と呼ばれる、抜歯した部位に自分の歯を移植するという治療法です。しかし、移植をするにはいくつかの条件を満たす必要があり、希望する人すべてが適応になるわけではない点には注意が必要です。

歯牙移植の条件

1.移植できる親知らずがある

まず、移植に使用する歯が健康であることが条件です。使用する歯に虫歯があったり、周辺の歯茎が歯周病になっている歯は使用できません。移植してもトラブルがおこりやすくなるため、移植する歯としては不向きです。

そしてもう一つの条件が、噛み合わせに干渉していない歯を選ぶことです。噛みあっている歯を使用すると、噛み合わせに影響がでて歯並びが悪くなってしまいます。

この二つの条件を満たすのが「親知らず」です。親知らずは人によって生えてくる本数が異なり、歯茎の中に埋まったままになっている場合があります。埋まっている親知らずも使用できる場合がありますが、位置や角度によっては使用できないため、事前にCTやレントゲンで適合しているかを判断します。

2.移植する場所の歯の大きさに合っているか

親知らずのサイズと、抜歯した箇所の歯の大きさが合っているかどうかも移植の有無に関係します。

抜歯した箇所に対して親知らずが大きすぎる、もしくは小さすぎる場合は、歯並びや噛み合わせに影響するため使用できません。そのため、歯牙移植は前歯などには向かず、奥歯周辺の移植で行われるのが一般的です。

3.歯の根が複雑ではない

永久歯は歯の根が長く、その先は1～4本に分かれています。奥歯になるほど先の根の本数が増えるのが一般的ですが、中には歯の根が複雑な構造をしていることがあります。

親知らずは、横に生えていることもあり、場合によっては歯の根が折れたり本数が多くなったりしていることがあります。こうした場合は、抜歯時や移植時に歯茎にダメージを与えることがあるため使用できません。

4.持病がない

糖尿病や高血圧などの持病で、薬を服用している方は傷が治りにくくなったり、傷口から感染を起こしやすくなったりするため、移植できないことがあります。

また、免疫系の病気や代謝系の持病がある方も、その後のトラブルが懸念されるため治療ができないと判断されることがあります。

ただし、こうした病気があっても自己管理がしっかりできていて、医師が移植可能と判断すれば治療を受けられる可能性があります。

5.喫煙していない

たばこを吸っている方も歯の移植を受けることができません。たばこに含まれるニコチンやタールは、歯茎の免疫機能を低下させることが分かっています。

傷の治りが遅くなったり、細菌が増殖しやすくなったりするため、移植を希望する場合は一定期間禁煙するように指導するケースが大半です。

たばこは口で吸うため、歯や歯茎はニコチンやタールなどの有害物質に直接触れています。歯の健康面から考えても禁煙しましょう。

歯牙移植はこのような方におすすめです

歯牙移植治療のメリット・デメリット

歯牙移植治療のメリット

● 咬む力のコントロールがしやすい
● 若い方も治療を受けられる
● 自分の歯を使用するため拒否反応がすくない
● 保険適用

親知らずを移植する場合は、保険適用となります。事故や怪我などで歯を失ってしまった若い方でも、健康な親知らずがあれば治療可能です。

歯牙移植治療のデメリット

● 健康な歯がないとできない
● 生着しないリスクもある
● 必ずしも予知性が高いとは言えない
● 手技が難しい

健康な歯の移植が必要なため、高齢者や口腔内の環境が悪化している患者様の場合は治療を受けることができない可能性があります。また、歯茎の環境によっては生着しない可能性もあるでしょう。

また手技が難しいため、すべての歯科クリニックで行っているわけではなく、治療を行っているクリニックを探す必要があります。

当院の歯牙移植治療の特徴

当院の歯牙移植治療の特徴を紹介します。

新しいCT機器を使った検査

当院では新型のCT機器やレントゲン機器などの設備を備えています。治療の前にはこれらを使用して、移植できる歯があるかを確認します。

親知らずは、複雑な構造をしていたり、近くに神経が通っていたりすることもめずらしくないため、CTやレントゲンで詳しく確認することが大切です。

経験豊富な医師による抜歯と移植

当院で行っている歯牙移植は経験豊富な医師が手術を行っています。保存不可能な歯を抜歯すると同時に移植に使用する歯を抜歯し、すぐに該当箇所に移植します（場合によっては事前に保存不可能な歯を抜歯しますが、この場合は保険診療は適用されず、自費診療です）。

歯の移植は、抜歯する歯と代わりに使う歯の見極めがとても大事です。当院では担当医師をはじめ、スタッフ全員の教育にも力を入れております。治療に対する不安や不明点などありましたら、いつでもご相談下さい。